公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

2002年度[第11期]
2002年5月25日/福井県勝山市 勝山市立図書館

アメリカ論

池澤夏樹
池澤 夏樹/(財)白山麓僻村塾塾長。小説家、詩人。『スティル・ライフ』芥川賞、『母なる自然のおっぱい』読売文学賞、『マシアス・ギリの失脚』谷崎潤一郎賞、『すばらしい新世界』芸術選奨。芥川賞選考委員。沖縄在住。
 自分の中に2つのアメリカがある。1つは文化的に、現在の世界をリードしてきた国。もう1つは軍事力と武器の国だ。アメリカ社会には大量の武器がある。様々な事故や犯罪の元凶だが規制にならない。皆が「丸腰の不安」から抜け出せないのだ。それは個人だけではない。アメリカは国全体として武力によって事を解決しようとする傾向が強い。戦後、世界各地で小さな戦争をしてきた最大の国がアメリカだ。他国に自分に都合のいい政権を作る。そうでない側はつぶす。中南米での、アメリカの動きはその顕著な例だ。これまでの国の概念、サイズを超えて、アメリカは大きく強くなってきている。一種の帝国のようだ。その動きを象徴する言葉がグローバリーゼーションではないか。今後アメリカをどう抑えていくか。それが21世紀の世界全体の課題になるだろう。