公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

2002年度[第11期]
2002年10月26日/ 福井県大野市 南部酒造酒蔵

映画を語り、釣道を語る

黒土三男
黒土 三男(くろつち・みつお)/映画監督・脚本家。1947年熊本生まれ。立教大学卒業後、木下恵介プロに助監督として2年間所属。以後独立し、映画・テレビで活躍。代表作に映画『オルゴール』(89年興行収入トップ)、『渋滞』(ニューヨークタイムズにて絶賛)など。主な賞にギャラクシー賞、向田邦子賞など。
 日本映画が低迷している。「こうやったら受けるだろう」という作り方が招いた結果だ。同世代である中国のチャン・イーモウ監督の『初恋のきた道』には打ちのめされた。いい作品であることは勿論、同じ監督として、彼がこの映画を撮るためにどんな困難をクリアしたか、あるシーンを描くためにどれだけ人間を深く見つめなければならなかったか、痛いぐらいわかったからだ。ただこの作品は、日本の若い人たちにはわからないだろうと思った。恵まれすぎて、テレビや文明に毒されて育った人に、チャンのメッセージは届かないと思ったのだ。だが、そうではなかった。彼の「これを作りたいんだ」という心が、世代を超えて、見る人の心に届いた。映画を作る原点は、そこにあるのではないだろうか。