公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

平成16年度[第13期]
平成16年8月7日/白峰 望岳苑
俳句の楽しさ5

季語について

鷹羽狩行
鷹羽 狩行/1930年、山形県に生まれる。俳人。「狩」主宰。(社)俳人協会会長。山口誓子、秋元不死男に師事し、65年句集『誕生』で俳人協会賞受賞。74年『平遠』で芸術選奨文部大臣新人賞。99年文化関係者文部大臣表彰、2002年毎日芸術賞受賞。
 現代人の生活実感をもとにしたという新しい歳時記が今年出版された。俳壇の常識である陰暦ではなく、太陽暦を使い、かつ無季を入れたものだ。だが、これには賛同できない。多くの矛盾をはらんでいると同時に「伝統的な日本人の美意識」を吹き飛ばしてしまう恐れがあるからだ。例えば、この歳時記では春を三月からと定め、「立春」「春寒」「春浅し」「冴返る」などを冬の季語にしている。しかし季語は単なる言葉ではなく、背景に「季節の感情」を背負う。ゆえに「春の喜び」や「春をのぞむ心」を見事に表現するこれらの季語はやはり春のものなのだ。俳句を支えているのは、その季節の多様な表情であり、季節の心であることを忘れてはならない。それが人の心と重なり合ってはじめて、短い俳句が多くのことを語り得るのだ。俳句は季節を詠む詩である。そして季語を集め解説したものが歳時記である以上、「無季」を入れた歳時記はありえない。季語は「日本人の美意識のふるいにかけられ、磨き抜かれた言葉の集大成」である。季語をよく知ることこそ俳句の真の理解に通じることを知ってほしい。