公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

平成16年度[第13期]
平成16年9月4日/白峰 望岳苑

水俣

桑原史成・高橋治
桑原史成/1936年、島根県に生まれる。報道写真家。62年「水俣病」で日本写真批評家協会新人賞。65年「韓国」で講談社写真賞。82年「ドキュメント二人展」で伊奈信男賞。主な著書に「水俣病」「水俣・韓国・ベトナム」「報道写真家」「報道写真に生きる」「水俣の人びと」ほか。

高橋治/(財)白山麓僻村塾特別顧問。小説家。元松竹映画監督。1929年生まれ。84年『秘伝』で直木賞を受賞。88年任意団体「白山麓僻村学校」を立ち上げる(僻村塾の前身)。96年『星の衣』で吉川英治文学賞。ほか作品多数。
 大学に在学中に別の生き方をしたいと思い始め、写真学校に入った。フリーの写真家としてデビューするために模索し、ある戦略を立てた。まず、「就職」という可能性を全部排除した。次に「オリジナリティの高い作品を作る」という課題を自らに課した。そして撮るべき「テーマ」を探した。当時、自分が考えていたテーマはただ漠然と「手付かずで、器の大きなもの」というものだった。だがそんなものがすぐにみつかるはずもなかった。ところがある日、夜汽車の中で読んだ週刊朝日に水俣病の特集記事を見つけた。その時、「自分の捜し求めていたものはこれだ!」と直感した。これは本当に偶然な出会いだった。いま振り返ると、あの時、あの記事に出会えなかったら、そしてこれがテーマになると直感しえなかったら、今の自分はなかっただろうと思う。水俣でもそんな出会いがあった。水俣市立病院の院長だ。「写真で、いったい何ができるか!」と一喝しながらも病棟の撮影を特別に許可してくれた。彼がいなかったなら、私の水俣での記録は半分以下の力しか持ちえなかっただろう。水俣は写真家である自分の原点である。そして記録者として後世に伝えなければならない責務だと思っている。