公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

2005年度[第14期]
2005年10月1日/白峰 望岳苑
俳句の楽しさ6

海外俳句

鷹羽狩行
鷹羽狩行/1930年、山形県に生まれる。俳人。「狩」主宰。(社)俳人協会会長。山口誓子、秋元不死男に師事し、65年句集『誕生』で俳人協会賞受賞。74年『平遠』で芸術選奨文部大臣新人賞。99年文化関係者文部大臣表彰、2002年毎日芸術賞受賞。
 NHK学園海外スクーリングで2月にチュニジアへでかけた。参加者には、海外で句を作る場合、見聞したものに「日本のいつの季節を感じたかを基本としよう」と伝えた。なぜなら、この時点での日本の季節を超えて、その国らしさを表現するのが海外で俳句を詠むときのポイントだからだ。

「手に触れんばかり砂漠の星月夜」

  同行者がサハラ砂漠で、宝石のように煌めく星空に出合った感動を詠んだこの句は、「秋の句」として見事に成功してはいないだろうか。
  日本人が海外において詠んだ俳句を「海外俳句」と呼ぶ。私の「摩天楼より新緑がパセリほど」はその先駆けと言われているが、当時、アメリカのスケールの大きさを表現するのに、実は大変苦心した。そのときに役立ったのがメモだ。「感動の核となる言葉」を残しておいたからこそ、この句は生まれた。移動がともなう海外吟行では特にメモが大きな力となる。
  近年、海外で暮らす日本人の俳句を「在外詠」として区別するようになった。
  一方、世界50か国200万人の外国人が俳句に親しんでいる。今後は、その国固有の季語が生まれ、国際化時代にふさわしい「世界歳時記」ができるにちがいない。そして俳句が、国際文化交流の面でもよりよい役割を果たしていくだろう。