公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

2006年度[第15期]
2006年11月19日/白峰 望岳苑 
シンポジウム

旅にでよう。

鶴田真由・謝 孝浩・ 新井敏記・湯川 豊
鶴田真由/1970年鎌倉生まれ。女優。主な出演作に映画『きけ、わだつみの声』、『梟の城』、『半落ち』など。2006年、心温まる動物たちの物語として話題の『シャーロットのおくりもの』で声優デビュー。

謝孝浩/1962年長野県生まれ、文筆家・アスリート。標高6000メートルから海面下40メートルまで、幅広いフィールドワークを生かして活躍中。著書に『風の足跡』『藍の空、雪の島』など。
(新井)仕事を通じて俳優の緒方拳さんに会い、それが縁で笠智衆さんに会った。短い旅に同行し、笠さんの人柄に触れることができたことが忘れられない。旅には余儀ない旅と夢見た旅があると沢木耕太郎さんは言ったが、僕の場合、それは表裏一体だ。素敵な人に会いたい、それが自分にとっての旅の意味だ。

( 謝 )初めての海外旅行でパキスタンへ行った。体調を崩し、一週間寝込んだ。そのときに献身的な看護をしてくれたのが現地の宿屋の主人だった。回復して宿を出るとき、薬代を申し出たが断られた。「客人を看病するのは当たり前」というのが理由だった。そのときの感動が長く続く旅の原点になった。

(鶴田)女優になり、前進、前進の日々の中で、ふと立ち止まりたくなった瞬間に、ある人の助言で一人旅に出た。それが私の旅の始まりだった。ある旅では、自分の無力さを痛烈に感じさせられた。だが同時に、それは自分の眠っている感覚を目覚めていくような旅でもあった。私にとって旅は、細胞を起こしていく手段でもあるのかもしれない。

(湯川)ヨーロッパに行ったとき、文化というものは土地を歩き、実感するものだとつくづく思った。開高健さんは、旅について「少年の心で」と言った。驚く心を持て、ということだ。旅をして、心細さを感じることもある。それもまた旅の効用の一つではないだろうか。