公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

2007年度[第16期]
2007年10月28日/白峰 望岳苑

もう一つの国ブータン

瀬田信哉
瀬田信哉/1938年生まれ。阿寒・南アルプス・中部山岳国立公園(立山・上高地)レンジャーなどを歴任し、環境庁審議官として国の環境行政の舵取りを行う。
 ブータンを旅した。ここで見る光景は60年前の日本に似ている。こどもの様子、家族の様子、かつての日本の姿を見ているようだ。 30年前、ブータン国王は「国民総幸福量(Gross National Happiness)」という考えを唱えた。「持続可能で公平な社会経済学的発展」、「環境の保全」、「民族の文化の継承と発展」、「よき統治」。この4つを国の目標としているという。それぞれの数値目標をどう定めるか、近代化によって進む人間の欲望をどうコントロールしていくか。課題は山積みだが我々にも見習うべきところがあるだろう。
  ブータンは小国でありながら、1983年に国営の航空会社を持った。このことを知り、池澤さんの小説「マシアス・ギリの失脚」を思い出した。なぜ自国の飛行機を持たなくてはならなかったのか、その政治的な理由を喝破しているように思えたからだ。
  日本人のコミュニケーション能力が著しく低下している。溢れる情報のなかで自らが判断できない状態だ。それはテレビにも原因がある。ブータンで見た、人と人が伝え合う、気持ちを交流させるようなコミュニケーションを日本人は取り戻せないか。それこそがいま必要とされていることではないだろうか。