公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

2010年度[第19期]
2010年7月24日/白峰 望岳苑

日本のすごい味

平松洋子・湯川豊
平松洋子/フードジャーナリスト、エッセイスト。1958年生まれ。世界各地に取材し、食文化と暮らしをテーマに執筆している。著書に『おいしい日常』ほか多数。

湯川豊/1938年、新潟県に生まれる。(財)白山麓僻村塾副理事長。京都造形芸術教授大学。1938年生まれ。元文藝春秋常務取締役。著書に『イワナの夏』『夜明けの森、夕暮の谷』『須賀敦子を読む』読売文学賞。
(湯川)食べ物のことを書いた文章はたくさんある。書き手もたくさんいる。でも平松さんの文章は、その中でも個性的で際立っている。例えば、人間はなぜものを食べなきゃいけないか、ということが読むと自然と伝わってくる。これは、平松さんの中に「食べ物が生命の元である」という視点、意識が常にあるからだろう。食べ物を語るとき、実は一番大事なのはこのことだと思う。食べ物を素材にして、その先にあるものを見ながら書くのが平松さんの文章だ。ぜひ触れてほしい。

(平松)自分にとって、何を採り上げるか、何を書くかの選択には時間がかかる。まず、その食べ物から「書きたい」という要素を感じられるかどうか。次に、何度もそれを食べることで、そこにあるだろうと思われる、厚みとか深みを「こういう風に伝えたい」というある種の確信にまで育てられるかどうか。この二つの手続きが私には大事だ。

取材では、ここに来なければ、その人に会わなければ聞けない言葉に出合う。それはサラッとしながら、何かを表す言葉だ。目を見開かされる思いを何度もした。優れたものを作る人は、自分の考えや生き方をどうやったら味に表現できるか、深く考えている。そういうところを私はもっと深く知りたい。