公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

2010年度[第19期]
2010年9月18日/白峰 望岳苑

會津八一めぐり

〜 言霊の幸わい〜
寺田農 辻原登
寺田農/俳優。東海大学特任教授。1942年、洋画家寺田政明の長男として東京に生れる。文学座劇研究所の第一期生。現在、映画、テレビ、舞台、朗読、声優など多方面で活躍中。
役者を辞めようと思ったとき、偶然、歌人であり書家であった吉野秀雄を知った。短歌を作るときの心構えを伝える、彼の短いエッセイに感銘を受けた。そこには「何をどうみるか、見たものをどう感じるか、そしてどう表現するか」歌を作るということはこの3つに尽きる、と書かれていた。そのとき、これは役者そのものだ、と思った。以来、吉野の本を集め続けた吉野が生涯の師と仰いだのが會津八一だった。教育者であり、東洋美術の研究者であると同時に書家であり、歌人でもあった八一は奈良の仏像や寺院の芸術性に気がつき、それがいかに美しい存在であるか、広く世間に知らしめた。また何より実学を重視し、「理屈を言わずに、現物を見てこい」というのが彼の教育であった。学生を連れた奈良への引率旅行はその表れだった八一には『学規』という書がある。「一 ふかくこの生を愛すへし 一 かえりみて己を知るへし 一 学芸を以って性を養うへし 一 日々新面目あるへし」私にはこの言葉が八一という人を言い尽くしているように思う。吉野秀雄と會津八一。二人の先生の思いを芝居に活かし、少しでも近づくことができればと思う。みなさんもぜひ、二人の世界に触れてほしい。