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「旅の本」湯川豊
「旅の本」湯川豊
平成22年11月13日/午後3:00〜・白峰 望岳苑
「旅の本」湯川豊
湯川豊/1938年、新潟県に生まれる。(財)白山麓僻村塾評議員長。東海大学文学部教授。64年文藝春秋に入社し、「文学界」編集長、常務取締役を経て2003年退社。その間、敏腕編集者として数々の作家を育て上げた。優れたエッセイストとしても知られ、著書に『イワナの夏』がある。現在、毎日新聞書評を担当中。


旅の本について考えている。紀行文学と呼ばれるジャンルのものだ。池澤夏樹さんによれば、世界最初の紀行文学は前5世紀にギリシアのヘロドトスが書いた『歴史』だという。それを読み直して驚いた。旅をして出会った人たちのこと、その人たちが語った言葉が実に面白い。それは歴史というより、人間のエピソードの記録だった。ギリシア最古の書物が紀行文学だったことは、紀行文学とは何かを考える上でヒントになる。ルポルタージュ文学を面白くする必須の条件として、世界的ジャーナリストのカプシチンスキは「旅をして異文化に触れる」ことを挙げた。これはまさに紀行文学と重なる。加えて、フィクションを取り入れることで、より面白くなる可能性があると述べた。これには強く思い当たる作品があった。イギリスの作家ブルース・チャトウィンの『パタゴニア』だ。チャトウィンは、自分の体験したこと、見聞したことを書くというルポルタージュの原則は守りながら、この作品の中で、ある部分は小説化した。その部分とは非常に複雑で小説でないと表現できないような世界だ。紀行文学は多彩な魅力を持つ。さまざまな旅の本から、我々の世界を考えてみるのもいいだろう。
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