公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

平成24年度[第21期]
平成24年7月28日 /白峰 望岳苑
俳句の楽しさシリーズ12

震災と俳句

鷹羽狩行
鷹羽狩行/1930年、山形県に生まれる。俳人。「狩」主宰。俳人協会会長。山口誓子、秋元不死男に師事し、65年句集『誕生』で俳人協会賞受賞。74年に芸術選奨文部大臣新人賞。2002年に毎日芸術賞。2008年に蛇笏賞と詩歌文学館賞受賞。
 東日本大震災は俳句の世界にも大きな影響を及ぼした。俳人として、やるべきことは多々ある。その一つの使命は「良い俳句を残す」ことだ。震災後、発表された短歌と俳句を比べると、圧倒的に短歌に勢いがあったように思う。31音と17音という情報量の差、加えて短歌が時局性、社会性に適した詩形だからである。しかし、俳句の17音は短歌とは違う構造を持つ。季語があるため、連想と含蓄が広がり、わずか17音の言葉に複雑で微妙な内容を盛り込むことができる。だから短歌に負けないような詩もできるのだ。

  北上を急げよさくら前線も 狩行

 人も物資も日本全体が北へ向かうように、桜前線も急いでほしい。天災には天恵をもっての応援が一番なのだから。そんな気持ちを込めた。
 震災後、俳句の読みが変わった。震災という共有体験が働いて、震災とは関係なく作られたものまで〈震災の句〉と読まれる傾向がある。だが、行き過ぎは避けなければならない。
 震災による節電は、日本人に伝統的な情緒を思い出させるきっかけになった。風鈴、打ち水、端居…季語を実際に体験して句を作ることにもなった。
 被災された人たちを思い、良い句を作る、それが被災地を応援することにもなる。それが俳句の絆ではなかろうか。