公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

平成24年度[第21期]
平成24年11月3日/白峰 白山ろく民俗資料館 
山の民の知恵とわざ2

山の副業

塩野米松×山口一男
塩野米松/作家。1947年生まれ。聞き書きの名手で、失われゆく伝統文化・技術の記録に精力的に取り組む。2003年『なつのいけ』日本絵本賞大賞。『聞き書き にっぽんの漁師』『手業に学べ』『木の教え』 ほか書多数。
江戸時代、白峰の人々は、養蚕を正業とした貨幣経済の営みと自然利用を副業とした自給自足的な営みの中で生きていた。
 副業といっても、現代の感覚で副業を捉えてはいけない。実際にはいろんな仕事を一緒にやらないと生きていけなかった。だから季節に応じ、場所に応じ、必要に応じて、いろんなことをした。出作りの生活では、春になったら真っ先に山菜採りに行く。ふきのとう、こごみ、わらび、ぜんまい。その間に、畑の耕作をし、焼畑をするための道具を作る。その道具はすべて身近にある自然素材だ。
 炭焼きの場合、副業とはいえ、必死な仕事だ。きれいにたくさんの炭を作りたい。だが、一瞬の判断が炭の出来を大きく左右するほど炭焼きは難しい。だから全てに精魂込めて当たらなければならない。
 結局、副業一つにしても、すごく知恵がいる。おろそかにはできない。だから、親は必ず息子に教える。孫に教える。教わる側も仕事を継ぐために自然を活かし、資源を保つ。経験、伝承、資源を維持していくための知恵。これらが合わさって、初めて副業が成り立っていた。
 こういう生き方がかつてあった。そして、それが日本人の気質を作ってきたのではないだろうか。」