公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

2000年度[第9期]
2000年7月2日/白峰 望岳苑

大英博物館からの旅

池澤夏樹
池澤 夏樹/(公財)白山麓僻村塾塾長。小説家、詩人。『スティル・ライフ』芥川賞、『母なる自然のおっぱい』読売文学賞、『マシアス・ギリの失脚』谷崎潤一郎賞、『すばらしい新世界』芸術選奨。芥川賞選考委員。沖縄在住。
 世界中の過去の集積ともいえる大英博物館の所蔵品。その中で気に入った一品を選び、それが生まれた土地へ行く。そういう旅を重ねている。一つ一つの収蔵品の背景にある文化・文明を見ていくことで、改めてわかることがたくさんある。 エレクテイオンの乙女像の「衣装の襞を通じた肉体」や「感情表現の巧みさ」にギリシャ人のエロスを感じる。また権力を誇示することを目的に描かれた古代エジプトの壁画に「現代グラフィックの洗練性」とギリシャ人との「人間観の違い」を思う。人はいつの時代もさまざまな形でものを作り、表現する。古代への旅で、人間の全体像を考えてみるのもいいだろう。