公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

2004年度[第13期]
2004年4月25日/白峰 望岳苑

アイヌの衣服文化

本田優子
本田優子 /北海道立アイヌ民族文化研究センター非常勤研究職員。札幌大学、北海道教育大学非常勤講師。北海道日高地方二風谷在住のアイヌである萱野茂氏のアイヌ語辞典編纂に協力。以後、アイヌ文化保存活動に深く関わる。
アイヌの衣服は、私たちが思うステレオタイプのものだけでなく、実にバラエティーに富んでいる。そこから見えてくるのは、北の静かな島で、心豊かに暮らしていたというイメージとは違う、進取の気性に富んだ活発なアイヌの姿だ。アイヌの衣服には、動物、植物、外来の木綿を素材とする自製品のほか、外来品として中国大陸からと日本本土からのものがある。林子平は三国通覧図説の中で、日本の着物や中国の服を着ているアイヌの一家を記しているが、実はアイヌはいろいろな文化を取り入れることが得意な、国際的な感覚を持った民族でなかったか。蝦夷錦や陣羽織、小袖の使われた方や、日本本土の素材とアイヌの文様を見事に融合させた衣装などを見るとそう思わざるをえない。ヨーロッパにはアイヌが大陸と結びついて、壮大な毛皮貿易を行っていたという記録がある。「交易の民」としてアイヌは広く知られているのだ。残念ながら日本にはそういう記録は残っていない。むしろ日本に残された資料のなかには、差別的な視線が投影されたものが多い。アイヌに関する研究は発展途上の学問である。今後、これまでの考え方が大きく変わるような時代もきっと来るだろう。